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ご挨拶

研究代表者よりご挨拶

副院長 豊田

 脳出血は、日本を含めた東アジアでとくに発症率の高い病気です。国内における新規発症脳卒中の約2割を占め、年間4~5万人程度に発症すると推測されます。脳梗塞が近年の急性期再開通治療(tPA静注、機械的血栓回収)の進歩などで「治せる病気」になった一方で、急性期脳出血には決定的な後遺症改善効果を示す急性期治療法がありません。このため脳出血は死亡や高度機能障害に繋がり易く、征圧が切望される国民病です。
 脳出血への効果的な治療法を開発することは、海外の研究者にも共通する課題です。私たち国内多施設の研究者は、米国NIHの助成を受けた急性期降圧療法の医師主導臨床試験ATACH-2を6か国で行い、国内外の多くの患者さんのご協力をいただいて一定の研究成果を得ました。
 このたび私たちは、米国、カナダ、欧州の研究者らと共同で、再度NIHの助成を受けた脳出血急性期治療の医師主導臨床試験を始めます。血液中には凝固反応を司る多くの蛋白質(凝固因子と呼ばれます)が存在しますが、そのうち第VII因子の遺伝子組換え製剤を症状が起こって2時間以内の脳出血患者さんに静脈投与することで、後遺症の軽減を図る無作為化比較試験です。国内施設の研究基盤整備のために日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受け、また厚生労働省に先進医療として承認を受けたうえで、試験を始める予定です。
 試験の愛称FASTEST(rFVIIa for Acute Hemorrhagic Stroke Administered at Earliest Time)には、10数年前に行われた同種の国際試験FASTの研究デザインを改良して、臨床現場が待ち望む新治療法をぜひ証明したいという、真摯な思いを込めています。着実に成果を出せるよう、努めます。

2020年3月
国立循環器病研究センター 副院長  豊田一則

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